「お互いさま」という言葉の力|意味と日本人の心
「お互いさま」という言葉の力について考えます。助けた人も助けられた人も、気を負わずにいられる日本のことば。その意味と、昔の暮らしの支え合い、いまの家族や地域で生かす方法をやさしく紹介します。

重い荷物を持ってもらったとき。急な用事で子どもを預かってもらったとき。
「すみません、ご迷惑をおかけして」と頭を下げると、相手が笑ってこう言います。
「いいのいいの、お互いさまだから」
この一言で、ふっと気持ちが軽くなった経験はありませんか。
「お互いさま」の意味
「お互いさま」は、ざっくり言うと、こんな意味です。
- 自分も相手も、同じような立場にある
- だから、助けたり助けられたりするのは当たり前
「様(さま)」は、ようす、ありさまという意味です。「お互いさま」は「おたがいに同じようなもの」ということ。そこに、相手を思いやる気持ちがこめられています。
困っている人を助けるとき、「してあげた」と言うと、相手は借りができたように感じます。でも「お互いさま」と言えば、相手は気を負わずにすみます。
そして言った本人も、「いつかは自分も助けてもらうかもしれない」と、心のどこかで思っています。
支え合いの暮らしから生まれた
「お互いさま」の心は、昔の日本の暮らしと深くつながっています。
村の暮らしの「結(ゆい)」
昔の農村では、田植えや稲刈り、屋根のふきかえなどを、近所の家どうしで手伝い合いました。こうした助け合いを「結(ゆい)」と呼ぶ地域があります。
今日はあの家の田植え、明日はこの家の田植え。一軒だけではできない仕事も、みんなでやれば終わります。
手伝ってもらったら、次は手伝いに行く。だれかが一方的に得をするのではなく、ぐるりと回って、みんなが助かる。
これこそ「お互いさま」の考え方です。
長屋の暮らし
町の暮らしでも同じでした。江戸の長屋のように、狭い場所に多くの人が暮らすところでは、しょうゆや米の貸し借り、子どもの世話、病人の看病など、助け合いが欠かせなかったと言われます。
いまの暮らしで生かすには
いまは、近所づきあいが少なくなりました。ひとりで抱えこむ人も増えています。
だからこそ、「お互いさま」の言葉は大きな力をもちます。
助けてもらうのが苦手な人へ
「迷惑をかけたくない」と、助けを求められない人は少なくありません。
でも、助けてもらうことは、悪いことではありません。いつか自分が、だれかを助ける番がくるかもしれないからです。助けを受け取ることも、「お互いさま」の輪の一部です。
家族のなかの「お互いさま」
家族の間でも、この言葉は役に立ちます。
- 親の介護を、きょうだいで分け合うとき
- 法事やお墓の世話を、親戚で手伝い合うとき
- 忙しい家族の代わりに、家事を引き受けるとき
「やってあげている」ではなく「お互いさま」。そう思えると、気持ちのすれちがいが減ります。
ご先祖さまとの「お互いさま」
考えてみると、わたしたちはご先祖さまから、命や暮らしを受け取ってきました。
そのお返しは、ご先祖さまに直接はできません。でも、次の世代や、まわりの人に手渡していくことはできます。そうして命と心はつながってきたのかもしれません。
今日の一歩
今日、だれかに「ありがとう」と言われたら、「お互いさまだよ」と返してみてください。逆に、だれかに小さなお願いをしてみるのもいいでしょう。
支え合いの輪は、そんな一言から広がります。ご先祖さまがどんな助け合いのなかで暮らしていたか、家族に聞く七つの質問を手がかりに聞いてみてください。
文・つっちー



