「もののあはれ」の意味とは?本居宣長の考えをやさしく
「もののあはれ」の意味は、ものごとにふれて自然にわき上がる、しみじみとした心の動きのことです。江戸時代の本居宣長が『源氏物語』から見いだした考え方と、「あはれ」の語源、「をかし」との違いをやさしく紹介します。

「もののあはれ」とは、季節の移ろいや人との出会い・別れなど、ものごとにふれたときに、心が自然に動くことです。そして、その心の動きを知ることだと言えます。
この言葉を大切な考え方として広めたのが、江戸時代の学者、本居宣長(もとおり・のりなが)です。宣長は、『源氏物語』の心は「もののあはれ」にあると説きました。
「もののあはれ」の意味
「あはれ」はため息のことば
「あはれ」は、もとは心が動いたときに思わず出る「ああ」というため息のような言葉だった、と言われます。
いまの「哀れ」というと、かわいそう、という意味が強いですね。でも昔の「あはれ」は、悲しさだけではありません。うれしさ、美しさ、なつかしさ、いとしさ。心がじんと動くことすべてを表しました。
「もの」がつくと
「もの」は、ものごと全般をさします。つまり「もののあはれ」は、
- 桜が散るのを見て、胸がいっぱいになる
- 久しぶりに会った友人の顔に、過ぎた年月を感じる
- 秋の夕暮れに、わけもなくしんみりする
といった、ものごとにふれて生まれる、しみじみとした心の動きのことです。
本居宣長と「もののあはれ」
どんな人?
本居宣長(1730〜1801年)は、伊勢国(いまの三重県)松阪の人です。医者として働きながら、日本の古い書物や言葉を研究しました。『古事記』を読み解いた『古事記伝』でも知られています。
『源氏物語』の読み方を変えた
宣長は1763年ごろにまとめた『紫文要領(しぶんようりょう)』で、「もののあはれ」をくわしく論じました。のちに『源氏物語玉の小櫛(たまのおぐし)』にも、その考えを書いています。
当時、『源氏物語』は、仏教や儒教の教えを伝える本として読まれることもありました。けれど宣長は、物語は教えを説くためのものではない、と考えました。人の心の動きを、ありのままに書いたものだと言ったのです。
『源氏物語玉の小櫛』には、こんな一文があります。
何事にまれ、感ずべき事にあたりて、感ずべき心を知りて感ずるを、もののあはれを知るとはいふ(本居宣長『源氏物語玉の小櫛』)
どんなことでも、心を動かされるべきことに出会ったとき、その心を知って感じる。それが「もののあはれを知る」ことだ、という意味です。
宣長は、こうした心は物語だけでなく、和歌の大もとにもあると考えました。うれしいことも悲しいことも、感じたままを大切にする。そこに人らしさがある、という見方です。
この考え方は、日本人の美しさの感じ方を語るときの、大切な言葉の一つになりました。
「をかし」との違い
平安時代の美しさを表す言葉として、「もののあはれ」とよく比べられるのが「をかし」です。
- もののあはれ … しみじみと胸にしみる感動。『源氏物語』に結びつけて語られることが多い
- をかし … 明るく、おもしろい、すてきだと感じる気持ち。『枕草子』に結びつけて語られることが多い
ただ、これは大まかな分け方です。どちらの作品にも、両方の気持ちが描かれています。
よくある質問
「もののあはれ」は悲しいという意味?
悲しさだけではありません。喜びや美しさに心が動くことも含みます。「しみじみと心が動く」と覚えるとわかりやすいです。
「わびさび」とは違う?
わびさびは、質素なものや古びたものに美しさを見る考え方です。もののあはれは、ものごとにふれて動く心そのものに目を向けます。
今日の一歩
今日、心が少しでも動いた瞬間を、一つだけ思い出してみてください。夕焼け、道ばたの花、誰かの一言。それが、あなたの「もののあはれ」です。
昔の人も、季節の草花に心を寄せてきました。家紋に桜や藤、萩などの草花が多いのも、その表れと言えるかもしれません。わが家の紋は苗字から家紋を引くで調べられます。
文・つっちー



