陰徳とは?意味と「陰徳あれば陽報あり」|人知れずする善いこと
陰徳とは、人に知られないところでする善い行いのこと。「陰徳あれば陽報あり」の意味と出典、日本で大切にされてきた理由、家族の中に残る陰徳の話、今日からできる小さな陰徳の例を、やさしい言葉で紹介します。

「陰徳(いんとく)」とは、人に知られないところでする善い行いのことです。
「陰徳あれば陽報(ようほう)あり」は、人知れず善いことをすれば、いつかはっきりとよい形になって返ってくる、という意味のことわざです。見返りを求めず、黙って善いことをする。その姿勢を表す言葉として、昔から使われてきました。
陰徳の意味をやさしく
漢字を分けると、意味が見えてきます。
- 陰 … かげ。人の目にふれないところ
- 徳 … 人として善い行い、身についた善さ
つまり陰徳は「かげでする善いこと」です。反対の言葉は「陽徳(ようとく)」で、人に知られて、ほめられるような善い行いを指します。
陽徳が悪いわけではありません。人前でする善いことも、だれかの助けになります。ただ、ほめられることが目的になると、気持ちがずれていきやすい。だからこそ、昔の人は人目のないところでの行いを大切にしたのだと言われます。
陰徳のポイントは、だれかに見せるためではない、ということです。名前を出さずに寄付をする。だれも見ていない道のごみを拾う。共用の場所を、次の人のためにきれいにしておく。どれも小さなことですが、こうした行いが陰徳と呼ばれます。
「陰徳あれば陽報あり」の意味と出典
このことわざは、中国の古い思想書『淮南子(えなんじ)』にある「陰徳ある者は必ず陽報あり」という言葉がもとだと言われます。『淮南子』は、紀元前の中国でまとめられた書物です。
- 陰徳 … かげでする善い行い
- 陽報 … 目に見える、はっきりしたよい報い
ただし、この言葉は「善いことをすれば得をする」という約束ではありません。報いを当てにした時点で、それはもう陰徳ではなくなってしまう、とも考えられてきました。
大事なのは、報いがあるかどうかより、見返りを求めずに行う心のあり方です。ことわざは、その心を励ます言葉として受け取るとよいでしょう。
「陽報」も、お金や名誉のような目に見えるものだけとはかぎりません。人から信頼される。気持ちよく毎日を過ごせる。そうした形で返ってくるもの、と受け止める人もいます。
日本で陰徳が大切にされてきた理由
日本には「お天道様が見ている」という言い方があります。だれも見ていなくても、恥ずかしくない行いをしよう、という考え方です。陰徳は、この感覚とよく似ています。
また、仏教の教えや、商家の家訓の中にも、陰徳を重んじる考え方が見られると言われます。人に知られなくても善いことを積み重ねる。それが家や店を長く続ける土台になる、と考えられてきたようです。
家族の話にも、陰徳はよく出てきます。
- 「おじいさんは、困った人にそっとお米を分けていたらしい」
- 「ひいおばあさんは、近所の子の面倒をよく見ていた」
本人は何も言わなかったのに、あとになって周りの人から聞いて知る。そんな話がどの家にもあるのではないでしょうか。だれかの陰徳は、本人がいなくなったあとに、人の口から伝わっていくものなのかもしれません。
よくある質問
陰徳は人に話してはいけないの?
決まりはありません。ただ、自分から「いいことをした」と言って回ると、陰徳の意味は薄れると考えられてきました。話すときは、自慢ではなく、だれかの参考になる形で伝えるとよいでしょう。
「陰徳を積む」とはどういう意味?
人知れず善い行いを、少しずつ重ねていくことです。特別なことでなくてかまいません。毎日の小さな行いの積み重ねを指す言い方です。
今日の一歩
今日、だれにも言わずに、小さな善いことをひとつしてみてください。使ったところを来たときよりきれいにする。家族の靴をそろえておく。それだけで十分です。
もうひとつ、家族に「うちのご先祖さまで、人知れず人を助けていた人っている?」と聞いてみるのもおすすめです。思いがけない話が出てくるかもしれません。聞き方のコツは家族に聞く七つの質問にまとめています。
文・つっちー



