言霊(ことだま)とは?意味と万葉集の「言霊の幸はふ国」
言霊(ことだま)とは、言葉に力が宿るという日本の古い考え方です。万葉集の「言霊の幸はふ国」という表現や、忌み言葉の習わし、ふだんの言葉づかいとのつきあい方を、やさしく紹介します。

「そんなこと言うと、本当になっちゃうよ」
小さいころ、家族にこう言われたことはありませんか。悪いことを口にすると、それが起きてしまう気がする。逆に、よい言葉を声に出すと、少し前を向ける。
日本には、こうした感覚を表す言葉があります。それが言霊(ことだま)です。
言霊とは
言霊とは、言葉には力が宿るという考え方です。
声に出した言葉が、まわりのものごとに働きかける。昔の人は、そう感じてきたと言われます。
ここでいう「霊(たま)」は、目に見えない力や、たましいのようなものを指します。言葉はただの音や記号ではなく、何かを動かすものだと考えられていたのです。
万葉集に出てくる「言霊」
言霊という言葉は、とても古くから使われています。
奈良時代にまとめられた歌集『万葉集』には、山上憶良(やまのうえのおくら)が遣唐使を送り出すときに詠んだ長い歌があります。その中に、こんな一節があります。
言霊の幸はふ国と語り継ぎ言ひ継がひけり(『万葉集』巻五)
「幸はふ(さきはふ)」は、栄える、幸せをもたらすという意味です。
つまり、「日本は、言葉の力によって幸せがもたらされる国だと、昔から語り伝えられてきた」という内容です。旅立つ人の無事を願う歌の中で、この言葉が使われています。
千年以上前の人も、言葉に願いをこめていたことがわかります。
暮らしの中に残る言霊
言霊の感覚は、今の暮らしにも残っています。
忌み言葉
結婚式で「切れる」「別れる」を避けたり、受験生の前で「落ちる」「すべる」を言わないようにしたりします。こうした言葉は忌み言葉(いみことば)と呼ばれます。
縁起の悪い言葉を口にすると、それが起きてしまうかもしれない。そんな気持ちから生まれた習わしと言われます。
言いかえの工夫
ほかにも、こんな言いかえがあります。
- 「終わる」ではなく「お開き」
- 「するめ」を「あたりめ」と呼ぶ(「する」がお金を失う意味に通じるため、という説があります)
- 「梨(なし)」を「ありの実」と呼ぶ
言いかえ方は地域や家によって違います。
あいさつ
「いってらっしゃい」「おかえりなさい」も、相手の無事を願う言葉です。毎日なにげなく口にするあいさつにも、願いがこもっています。
言霊とのつきあい方
言霊は、「言えば必ずかなう」「悪い言葉を言うと必ず悪いことが起きる」というものではありません。昔から伝わる感じ方の一つです。
ですから、うっかり悪い言葉を言っても、こわがる必要はありません。
ただ、言葉が気持ちに影響することは、多くの人が感じているのではないでしょうか。
- 「どうせ無理」と言うと、手が止まりやすい
- 「ありがとう」と言うと、気持ちがやわらぐ
- やさしい言葉をかけられると、その日一日が明るくなる
自分が口にした言葉を、いちばん近くで聞いているのは自分です。言霊は、言葉を大切にあつかうための昔の人の知恵とも言えそうです。
今日の一歩
今日、家族や身近な人に一つだけ「ありがとう」を声に出して伝えてみてください。
そして、自分の家で昔から言われている言葉や口ぐせがないか、思い出してみましょう。祖父母がよく口にしていた言葉には、その家の大切にしてきたものが表れています。家族にどう聞けばいいか迷ったら、家族に聞く七つの質問を参考にしてください。
文・つっちー



